日本の現状
2006年12 月13 日に開かれた第61 回国連総会において「障害者権利条約」が採択されました。条約には、「文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加」(第三十条)があり、映画などのコンテンツに対してのアクセス保障も大きな課題となっています。これを受けて、2008 年4 月3 日までに20 ヵ国が批准し、2008 年5 月3 日付けで条約が発効しています。日本政府は2007 年9 月28 日に署名したものの、2011 年2 月現在も条約には批准しておらず、この影響で映像コンテンツ業界の対策も立ち遅れているのが現状です。
現在、地上波の放送字幕のみ総務省の補助金政策(毎年約5億円)もあり、字幕付与率は高まっていますが、配信等のメディアの多様化に字幕、音声ガイドなどのバリアフリーはまったく考慮されていません。新しいメディアが出てくる度に障害者は声を上げ続けなければならないのでしょうか。
内閣府「平成19年版高齢社会白書」では65才以上2,660万人。70才で5割が高齢難聴となります。何もしなければ優れた芸術にアクセス出来ない方々が爆発的に増えるのです。
何が必要か?
公共的な字幕・音声ガイドスクリプトのアーカイブ化と配信のインフラ
地上波デジタル放送を観るとき、リモコンの「字幕」ボタンを押すと、多くの番組で字幕が表示されます。これは助成金制度に支えられているものの、放送局の努力によって毎年字幕付与率をアップしてきた経緯があります。しかし放送されたコンテンツがDVD化される時、必ずしも字幕がDVDに収録されるわけではありません。なぜならこの「字幕データ」は放送局の所有物だからです。では新しいメディア、例えばインターネットを利用した動画配信、携帯電話による動画配信などは沢山の会社で始まっています。放送局と同じように、これらの配信会社にもバリアフリー化を求めるのでしょうか?助成金制度を拡充するのでしょうか?それは税金の無駄遣いであり、実質的には不可能です。
1つの作品に対して、基本的に字幕と音声ガイドのデータは一つあればいいのです。それを公共的に管理し、配信する仕組みが出来ればメディアを発信する会社のコストは圧倒的に下がります。
映画・映像業界、権利者団体、障害者団体等、そのすべての歩み寄り
日本の映画を映画館で観るとき・・・
字幕が入っていると「邪魔だなぁ…」と思う方が居るかも知れません。音声ガイドがスピーカーから流れると「うるさいなぁ…」と思う方が居るかもしれません。これは、携帯端末によるバリアフリー化で解決します。少しだけ歩み寄れば同じ空間で映画を皆で楽しむことが可能です。
「ボランティアで字幕と音声ガイドを付けたいのだけど、著作権があるので出来ないのでしょ?」映画館などでバリアフリー対応をする時、上映の許諾を得ていれば基本的に問題ありません。但し、監督の同一性保持権に留意し、作品の意図に忠実なデータを用意しなければなりません。
お互いの交流が無かったためグレーになっていた問題を歩み寄りで解決していきましょう。
字幕・音声ガイド制作における圧倒的なコストダウンと新しい技術開発
DVDに字幕や音声ガイドが収録されない大きな理由はそこにかかるコストです。ある程度売れる作品であればそのコストをかけられますが、多くの作品は対応出来ません。
2006年1月に始まった、キュー・テック社の[web-shake字幕をつけ隊!]は字幕の無いDVDに対し、ネットから字幕を配信するという画期的なサービスでした。「サーバ上にデータを持つことで、映画館から家庭までバリアフリーに出来るのでは無いか?」という発想で、様々な仕組みが出来つつあります。そのひとつ「ニコンUP」を使った、バリアフリー上映会も始まっています。
一つの作品に一つのデータ。パソコンベースで作成出来るデータですので、その圧倒的なコストダウンも可能にします。
