top of page

映画・映像のバリアフリー化とは?

感動を共有するための手段

外国語の映画を映画館やテレビで観るときに、あなたは字幕版と日本語吹き替え版のどちらを選びますか?

あの俳優の声が聞きたいから字幕版、
文字を読むのが嫌だから吹き替え版、
様々な好みがあるでしょう。

「映像のバリアフリー」とは、ただ、この選択肢を増やすことです。

私たちの活動は「字幕の入っていないDVDに字幕を入れてください」という一人の耳が聞こえない映画ファンの声からはじまりました。
聴覚や視覚に障害のある方が映画を十分に楽しめていない現状を知り、当事者とともに試行錯誤しながら、様々な工夫を提案しています。そんな活動の中で、バリアフリー字幕、手話映像、音声ガイド、外国語字幕…選べるメニューを増やせば、映像にアクセスできる人が増え、いろんな状況の人が一緒に映像を楽しみ、感動を共有することができることに気がつきました。

バリアフリーと聞くと、スロープやエレベーターを想像される方もいらっしゃるかと思います。たとえば階段を登ることができる人でもスロープやエレベーターを快適に利用することがあるように、映像のバリアフリーも、決して障害者対応だけのものではありません。

映像の味わいを深め、映像にアクセスする楽しみが増えるバリアフリー化は、映像・映画の未来のカタチだと信じています。

映像のバリアフリーについて、私たちと一緒に考えてみませんか?

​バリアフリー上映とは?

たくさんの人が映像にアクセスできるよう、「バリアフリー字幕」「手話映像」「音声ガイド」などを備えた上映のことです。

オープン? クローズド?

バリアフリー上映に際して、バリアフリー字幕・音声ガイドつきで上映するには2つの方法があります。

1)オープン方式
バリアフリー字幕付きの映像を上映し、会場全体に音声ガイドを流す方法
2)クローズド方式
一見、映像に字幕や音声ガイドはなくても、携帯機器などから必要な方だけに字幕や音声ガイド付きで鑑賞いただく方法

※ON OFF可能なテレビの字幕を「クローズドキャプション」というのに対し、映画の翻訳字幕のように焼き付けて上映される字幕を「オープン字幕」といいます。バリアフリー映画上映会では、通常、バリアフリー字幕はオープン方式、音声ガイドはクローズド方式で上映する場合が多いです。

※MASCが開発、推進してきた「セカンドスクリーン型情報保障」はクローズド方式です。

バリアフリー字幕とは?

耳が聞こえない、また聞こえづらい人も安心して映画を楽しめるよう、映像作品の「音」が伝えている情報を文字にして表示するのが、バリアフリー字幕です。映像の中の誰が喋っているのか分かるように、セリフと同時に話者名を文字表記し、更に音楽や効果音などの作品中重要な意味を持つ音の情報を、可能な限り文字で表記します。外国映画を見る時に付与されている日本語の字幕はセリフのみを文字表記したもので、バリアフリー字幕とは違ったものです。 

補足1:「音楽や効果音などの作品中重要な意味を持つ音の情報」が無い、台詞のみの字幕は含まない。

補足2:音楽作品で「歌詞とMC」の両方字幕化されているものは「バリアフリー日本語字幕」となる。

​バリアフリー音声ガイドとは?

目が見えない、また見えづらい人も安心して映画を楽しめるよう、映像作品の「画」が伝えている情報を言葉で説明するのが、バリアフリー音声ガイドです。物語の進行や場面また人物の動きや表情などを、元々映像に入っている音を邪魔しない範囲で、音声でガイドしていきます。外国映画では、セリフの日本語吹替えと同時に音声ガイドを付与したものが、バリアフリー日本語音声ガイド版になります。

日本の現状

2006年12月13日に開かれた第61回国連総会において「障害者権利条約」が採択され、2014年1月20日に我が国も批准しました。その第30条は以下のようになっています

1 締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、次のことを確保するための全ての適当な措置をとる。
(a) 障害者が、利用しやすい様式を通じて、文化的な作品を享受する機会を有すること。
(b) 障害者が、利用しやすい様式を通じて、テレビジョン番組、映画、演劇その他の文化的な活動を享受する機会を有すること。
(c) 障害者が、文化的な公演又はサービスが行われる場所(例えば、劇場、博物館、映画館、図書館、観光サービス)を利用する機会を有し、並びに自国の文化的に重要な記念物及び場所を享受する機会をできる限り有すること。

批准に伴い国内法の「障害者差別解消法」が2016年4月1日に施行されました。
これにより映画・映像のバリアフリー化は待ったなしの状況になりました。
また、内閣府の「平成19年版高齢社会白書」では65才以上が2,660万人と報告されています。70才で確率的に約5割が高齢難聴となります。何もしなければ優れた芸術にアクセスできない方々が、今後爆発的に増えるというのが我が国の実情なのです。

日本映画の劇場におけるバリアフリー視聴環境は、MASC設立以降、スマートフォンで聞ける音声ガイド、字幕メガネなどの開発・提供が進み大きな進展をしました。令和5年度、シネコンで上映される10億円以上の興行収入が合った作品の97%がバリアフリー化されました。DVD・Blu-rayなどのパッケージ商品も対応が進んでいます。

*合理的配慮の提供を民間事業主に義務付ける改正障害者差別解消法が2021年5月、参議院本会議で可決、成立しました。 これまで、合理的配慮の義務付けは国や自治体のみで、民間事業者には努力義務となっていましたが、今回の改正によって、今後は義務として、配慮提供が求められることとなります。令和6年4月1日施行。

解決するためには?

映画・映像業界、権利者団体、障害者団体等、そのすべての歩み寄り

日本の映画を映画館で観るとき……

字幕が入っていると「邪魔だなぁ……」と思う方がおられるかも知れません。音声ガイドがスピーカーから流れると「うるさいなぁ……」と思う方がおられるかもしれません。これらは、字幕表示端末、音声ガイドのFM配信などで解決します。少しだけ歩み寄れば同じ空間で映画を皆で楽しむことが可能なのです。
「ボランティアで字幕と音声ガイドを付けたいのだけど、著作権があるのでできないのでしょ?」映画館などでバリアフリー上映を行う場合、作品そのものの上映許諾を得ていればバリアフリー化は基本的に問題ありません。ただし、監督の同一性保持権に留意し、作品の意図に忠実なデータを用意する必要はあります。MASCは当事者の方々と作品の権利者、上映館、上映サポート活動をされている団体を結びつけます。映画・映像業界、権利者団体、障害者団体等、そのすべての歩み寄りで解決していきましょう。

バリアフリー実現のためにコストダウンへの知恵

映像のバリアフリー化が進まない大きな理由はそこにかかるコストにあるます。できないことを可能にするためには“必要である”という認識を持つことが最も近道。そこからアイデアと技術を駆使すれば、たとえば私たちが提案しているような、サーバ上にデータを置くだけで映画館から家庭まで、映画をバリアフリーにする仕組みをつくることが可能になるのです。たとえば字幕の場合、配信による同期であればパソコンベースで制作と運用ができ、上映作品で字幕をDCPに組み込む工程に比べて1/2以下にコストを押さえられるのです。また、同じ作品に対して放送局やメディアの発売元ごとに字幕制作が行われている非効率な現状を、映像業界全体をとおして効率的なかたちに変えていく必要があります。

bottom of page